ここでは主に新聞紙面で過去に取り上げられた歯科関連の記事をご紹介させていただきます。
歯周病に限らず、幅広く歯に関係するものの中で話題性のある記事や新しい技術、治療法などを扱った記事を中心に掲載していきたいと考えております。
できる限り原文のまま掲載しておりますが、固有名称等の繰り返し部分などで一部省略する場合もございます。ご了承下さい。
 
下のリストは上から順に新しい記事となっております。


日本経済新聞 2015.11.17より

歯がグラグラして最終的には抜けてしまう歯周病は、成人の多くが患っている炎症性の病気だ。虫歯と並ぶ歯科の二大疾患だが、影響は口腔内にとどまらない。これまでの研究から、肝臓病や心臓病、 糖尿病などの全身の疾患とも密接に関係していることが分かってきた。歯周病を治療すれば、こうした全身疾患の症状改善にもつながる。
歯周病は歯と歯茎の間に細菌の塊である歯垢や歯石がたまり、細菌感染を引き起こす。この結果、 歯の周りに炎症が起こる。初期は歯茎が腫れる歯肉炎、進行すると歯を支える骨が破壊される歯周炎と呼ばれる。 軽い症状まで含めると日本人の成人の約8割が歯周病にかかっている。自覚症状がないまま進行し、放置すると歯が抜け落ちてしまう。さらにその影響は全身に及ぶ。
神奈川県在住の女性のAさん(46)は肥満などが原因で発症する「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」を患っていた。
肝機能に障害も出て横浜市立大学附属病院を受診し、食事制限と共に積極的に体を動かす食事運動療法に半年間取り組んだ。
薬物治療も受けたものの、ALTという肝機能を示す数値は異常値のままだった。 
 
Aさんは歯茎に出血も見られたため、神奈川歯科大学付属横浜クリニックで歯周病の治療をすることにした。
口の中の状態が改善すると、ALTの値がほぼ正常値まで下がった。
横浜市立大病院消化器内科と横浜クリニックで診療にあたる結束貴臣医師は「 歯周病菌が血液中にしみ出して全身を巡り、肝臓に届いて炎症を起こしている。歯周病の改善でこうした症状が抑えられたのだろう」と指摘する。
 
肝炎と飲酒は関係が深いが、NASHはアルコールをたしなまない人でも肝臓に脂肪が蓄積する。
これまでも「食事療法や薬物投与によっても症状が改善しない患者が一部いる」(結束医師)ことが知られていた。
こうした患者に歯周病治療を施せば、NASHの症状改善につながる可能性があるという。
 
このため、年内にも横浜市立大病院と神奈川歯科大付属病院、横浜クリニックで医師主導の臨床試験 (治験)を始める予定だ。
20歳以上でNASHと歯周病を患い、食事療法と薬物が効かない200人が対象になる。
 
歯科医が歯磨きの方法を指導したり、歯に付いた歯石を取り除いたりする。
歯周病の症状が進んだ人では、歯茎を局所麻酔して、歯根と呼ばれる歯茎で隠れた部分に付着した歯周病菌を除去する。
こうした治療によって肝機能が改善するか詳しく調べる。
 
歯周病と関連があるとされる病気は他にもある。
よく知られているのが糖尿病だ。
この病気は血糖を下げるホルモンのインスリンがうまく働かなくなったり足りなくなったりする。
東京都健康長寿医療センター研究所の平野浩彦専門副部長(歯科医師)は「 糖尿病の人は歯周病にかかりやすく、歯周病の人は糖尿病が重症化しやすい。相互に関係している」と指摘する。
 
米国の研究によると、生活習慣などから発症する2型糖尿病の患者は糖尿病ではない人に比べ、歯周病 が重症化するリスクが1.5~3倍程度高かった。
糖尿病患者は病原体などから身を守る免疫の働きが低下しており、炎症による組織の破壊が進みやすいことなどがその理由とされている。
 
また、歯周病菌から出される毒素が血管内に入ると炎症性物質がつくられインスリンができにくくなり、血糖値が上がることも分かっているという。
「薬や食事のコントロールをしても血糖値が下がらない患者が、 歯医者に行くと症状が改善することもある」(平野専門副部長)。
歯周病の治療によって、インスリンの作用を阻害する炎症性物質の血中濃度が減少するためだと考えられている。
 
歯周病は中年以降に多い病気だと思われがちだが、若い世代でも発症するタイプもある。
「侵襲性歯周炎」と呼ばれている。
細菌感染で起こるのは通常と変わらないが、家族内で発症するなどの特徴から 「遺伝が関係している」と神奈川歯科大学の鎌田要平助教は説明する。
 
侵襲性歯周炎の人は20~30代で歯を支える骨の状態が通常の人より大きく悪化しており、歯が抜けやすくなっている。
妊娠・出産をする女性が歯周病だと「早産や低体重児出産のリスクが高まる」(結束医師)。
妊娠前に歯科医院を訪れて口の中をチェックすることが大切だと専門家は注意喚起している。

明確な関係性の解明はこれからだが、高齢女性に多い骨粗しょう症では破骨細胞による骨の破壊が骨の 再生能力を上回ることで、骨がもろくなってしまう。
「歯周病患者は歯周病の影響で骨を支える部分の破骨細胞が活発になっている」と松本歯科大学の宇田川信之教授は話す。
歯周病にも気を付けることが、骨折などを防ぐのに役立ちそうだ。
 
歯周病は、心筋梗塞などにつながる動脈硬化、慢性腎臓病、誤嚥(ごえん)性肺炎などとの関連も指摘されている。口の病気だと甘く見ずに、しっかり治療することが他の病気を防ぐことにつながる。

 日本経済新聞 2015.10.23より

家族の吸うたばこの煙にさらされた子供は、家族に喫煙者がいない子供に比べて、3歳までに虫歯になる可能性が2倍になったとの研究結果を、京都大の川上浩司教授と田中司朗准教授らのチームが23日までに、英医学誌BMJに発表した。
 
チームは、神戸市で2004~10年に生まれた7万6920人のデータを解析。
生後4カ月での受動喫煙の状況と、3歳時点で1本以上の虫歯や歯の欠損、治療歴があるかどうかを調べた。
 
その結果、家族に喫煙者がいる子は全体の55.3%おり、家族に喫煙者がいない子に比べて虫歯になる可能性が1.46倍になった。
特に、面前で吸われる環境にあった子では2.14倍に高まったという。
 
これまでの研究では、受動喫煙によって唾液の成分が変化し、虫歯の原因菌が集まって歯垢(しこう)や虫歯ができやすくなる可能性が示されている。
川上教授は「子供の健康な発育のため、大人は生活習慣に十分気を付けるべきだ」と話している。

日本経済新聞 2015.09.30より

1970年代には子どもの9割に虫歯があった。
予防意識が強くなり、現在は虫歯のある子は減っている。
ただ、親が油断すると虫歯だらけになるリスクは依然高い。
子の虫歯を防ぐため親はどうすればよいか。日経BP社の共働き世帯向け情報サイト「日経DUAL」から、小児歯科専門医・坂部潤さんのアドバイスを紹介する。


虫歯は主に、口の中にある虫歯菌が原因で起こります。
虫歯菌が食べ物に含まれる「しょ糖」を食べ、増殖してネバネバとした酸性の排せつ物(プラーク)を出します。
そのプラークが歯のカルシウムを溶かし虫歯になります。
 
虫歯菌には数種類ありますが、歯につきやすい性質があるミュータンス菌が一番の原因菌です。
ミュータンス菌が好む「しょ糖」は甘い物のほかご飯やパンなどの炭水化物にも含まれます。
甘い物を食べなければ 虫歯にならないという考えは間違いです。
 
虫歯菌は親から子へ感染します。
虫歯は「ミュータンス菌による感染症」ともいえるのです。
虫歯菌が口内にない人はいないからです。
実は、生まれたばかりの赤ちゃんの口内にはほとんど虫歯菌がありません。しかし乳歯が生え始めたころから、赤ちゃんに接する人(両親など)の唾液を介して感染します。
口移しで食べ物を与えたり、スプーンや箸、コップを共有したりすることを避けても、スキンシップでも感染するので、虫歯菌の侵入を完全に阻止するのは不可能です。
 
遅かれ早かれ感染してしまう虫歯菌ですが、3歳まで気をつければ、その後の虫歯リスクをぐんと減らせます
口の中には様々な常在菌がありますが、3歳までは口の中の菌のバランスが未完成なため、虫歯菌が増殖しやすい環境です。
極力、虫歯菌を口に入れないようにしてこの時期を乗り切れば、常在菌の中にミュータンス菌が占める割合が少ないまま、菌のバランスが定着しやすいのです。
 
赤ちゃんへの感染のリスクを減らすために、親の虫歯は治療しておきましょう。
虫歯が多い親の唾液には虫歯菌が高濃度に含まれ、特に移りやすいので注意が必要です。
 
ただ虫歯菌に感染したとしても、即、虫歯を発症するわけではありません。
食習慣や歯磨き、唾液の質や量など様々な要因が重なって虫歯は起きます。
歯磨きで口内の虫歯菌の量を減らすことが虫歯予防のポイントになります。
 
虫歯になりやすいのは歯と歯の間、歯と歯ぐきの間、奥歯の溝、奥歯と頬の間、奥歯と舌の間などです。
歯が生え始めたら、1、2本でも歯ブラシを使って磨きます。子どもは歯ブラシをかんでしまうので、本人用と親の仕上げ磨き用の歯ブラシを用意しましょう。歯間の汚れ落としのためフロスの併用もお勧めです。

仕上げ磨きは、子どもを膝の上に寝かせる姿勢で1日1回は行います。
1歳半~2歳半のイヤイヤ期には嫌がる子も多いと思いますが、実はこの時期は最も虫歯になりやすい。
奥歯が出始めて、虫歯の発生率がぐんと高まるのです。板のような形の前歯に比べ、奥歯は形状が複雑で汚れがたまりやすいからです。
 
子どもが歯磨きを嫌がらないためには、同じ時間に同じ人が、同じシチュエーションで行うようにします。
仕上げ磨きでは、歯磨き粉は使わないほうがいいでしょう。
あおむけの体勢で口の中が泡立つと苦しいので、歯磨きを嫌がってしまいます。
 
歯ぐきと歯の境目をきちんと磨くには、歯ブラシを45度の角度で当てます。
奥歯と頬の間を磨くときは、口を「イー」の形にするより、半開きにするほうがうまく磨けます。
歯ブラシをぐっと押し当てて小刻みに動かすと、毛先が溝にきちんと入ります。
 
歯が痛くなってから歯科医院を受診すると、子どもは「歯医者さん=怖いところ」と感じてしまいます。
「定期的に通う、歯をキレイにしてくれるところ」と思えるように、歯が生え始めたら歯科医院を探すことを勧めます。
3、4カ月に1度、虫歯をチェックしてもらいましょう。
 
では、乳歯から永久歯への生え替わりの時期は、何に気をつければよいでしょうか。
 
子どもの乳歯は5歳から12歳にかけて永久歯に生え替わります。
この時期は乳歯と永久歯が混在しているため、歯に段差ができたり、歯肉が歯に覆いかぶさったりして歯磨きがしにくい状態です。
生え始めて2年以内の永久歯は軟らかく、虫歯になりやすいので注意が必要です。
 
虫歯はいくつかの要因が絡み合って発生しますが、ダラダラと飲食することと清掃不良が二大要因です。
おやつは1日1回までと決め、ダラダラと食べ続けないこと。
そして口内に長い時間とどまるあめやガム、キャラメルは なるべく避けましょう。
 
ただ、プラークが歯に付着し、治療が必要になるほど穴が開くまでには数週間かかります。
理論上、1日1回きちんと歯磨きができていれば、虫歯を防ぐことができます。
虫歯になった部分は、月単位で歯ブラシが当たっていない場所と考えられます。
 
唾液の量が減る就寝中は、最も虫歯のリスクが高まります
親が1日のうち1回仕上げ磨きをするなら、夜寝る前がお勧めです。
日本小児歯科学会では「8歳までは親による仕上げ磨きが必要」としています。
小学校入学と同時に仕上げ磨きをやめる家庭もありますが、このころは6歳臼歯という奥歯が生え始める時期。
歯肉が 覆いかぶさっている生えたての6歳臼歯に、早くも虫歯の穴が開いているケースも見られます。
 
小学生になっても夜は親が仕上げ磨きをし、朝は本人だけで歯磨きをさせ、少しずつ自分で磨くことに慣れさせるとよいですね。
仕上げ磨きをやめていいかどうかは、かかりつけ医に相談しましょう。

朝日新聞 2013.07.04より

奥歯を失うと、これまで原因とされてきた、たんぱく質の蓄積とは異なる仕組みでアルツハイマー病が悪化することを、広島大などのチームがマウスの実験で突きとめた。
広島大が3日発表した。
 
認知症の一つのアルツハイマー病は、脳内にアミロイドβという異常なたんぱく質が蓄積することで症状が進むと考えられている。
赤川安正・広島大名誉教授らは、遺伝子操作でアルツハイマー病を発症するようにしたマウスに、暗い部屋に入ると電気ショックを受けることを覚えさせてから、左右の奥歯6本を抜いたものと残したものに分けた。
約4カ月後に調べると、歯を残した方は7匹全てが暗い部屋に入らなかったが、抜いた方は10匹中6匹が入った。
 
どちらのマウスも脳内でアミロイドβが蓄積した面積に差はなかったが、記憶をつかさどる脳の海馬の細胞数は、歯を抜いた方が少なかった
アミロイドβの蓄積とは別に、海馬の細胞が減ることで学習や記憶能力が低下したと考えられるという。
赤川名誉教授は「かむことによる脳への刺激や脳の血流量が減った影響ではないか。今後、解明したい」と話している。

日本経済新聞 2011.10.09より

中年以降、歯肉が痩せてくると、下の歯肉は下がり、上の歯肉は上がってくる。
こうなったら要注意。
 
歯肉の下の象牙質が露出し、虫歯ができやすくなるからだ。
子供の虫歯の多くはかみ合わせ部分にできるが、大人は歯と歯肉の境目付近の、この部分の虫歯がどんどん増えてくる。
 
歯の表面を覆うエナメル質は人体で最も硬く水晶並みだが、象牙質は骨より少し硬い程度で、虫歯菌の酸にも弱い。
このため、象牙質は虫歯ができやすいだけでなく、進行もずっと速い。
 
東京医科歯科大歯学部教授の田上順次さんによると、歯肉は30歳代から痩せ始める
主な原因は加齢と、歯肉に炎症を起こし歯が抜ける原因をつくる歯周病
硬い歯ブラシで強くこすりすぎることも、歯肉を傷め痩せさせる原因になるという。
 
どんな対策が有効か。
まず、毛先が軟らかめの歯ブラシを使い、象牙質と歯肉を傷めないよう、優しく磨くことがポイント。
歯ブラシは強く押しつけすぎずに左右に小刻みに動かす。
それぞれの歯の表と裏を丁寧に、最低6~7分かけて磨くのが望ましい。
 
歯と歯の間の隙間には食べかすがたまり、菌が繁殖しやすくなる。
歯ブラシの毛先が届きにくいこうした場所には、フロス(歯間の汚れを取る細い糸状の器具)が効果的だ。
 
さらに、使う歯磨き剤にも気をつけたい。
通常の製品なら問題ないが、たばこのヤニの除去効果などをうたうものは研磨剤の含有量が多く、象牙質を削る恐れがある。
 
田上さんは「子どもと大人では虫歯の傾向が違う。歯肉の状態を見ながら、歯磨きを考えてほしい」と話す。

朝日新聞 2010.04.07より

脳梗塞の患者は、歯周病菌に感染している割合の高いことが、広島大学の細見直永助教(脳神経内科)らの研究でわかった。
 
研究グループは、脳梗塞患者132人と脳梗塞でない人111人の血液を調べ、歯周病菌に感染しているかどうかを調べた。
歯周病菌の量の平均値を比べると、脳梗塞患者は脳梗塞でない人より1.2倍高かった。
脳梗塞は大きく分けて、頸動脈(けいどうみゃく)などの太い血管が動脈硬化などで詰まる。脳の細い血管が詰まる。心臓内でできた血栓が脳血管をふさぐという3種類がある。
このうち、太い血管の動脈硬化が原因で起きる脳梗塞患者は、脳梗塞でない人に比べて歯周病菌の量が1.4倍と、他の2タイプの脳梗塞より高かった。
 
細見さんらはさらに、脳梗塞の原因となる動脈硬化や脂質異常と歯周病菌とのかかわりを調べた。
頸動脈の直径が75%以上詰まっている74人とそれ未満の169人を比べたところ、詰まっている人は歯周病菌の量が1.4倍高かった。
血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールの値が高い脂質異常症の人はそうでない人より歯周病菌の量が1.5倍高かった。
歯周病菌が歯茎から血液を通じて全身をめぐり動脈硬化を起こし、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす原因の一つになっているとされる。
血管が脂の塊で詰まっている部分に歯周病菌が多く見つかったとする海外の報告もある。
 
歯周病は30代以上の8割がかかっているとされる。
細見さんは「物が食べられない、見た目が悪いという理由だけでなく、脳梗塞の発症を防ぐためにも歯周病の治療が必要だ」と話している。
 
歯周病と脳梗塞のかかわりについては、米ハーバード大のグループが1986年から12年間かけて、40~75歳の男性4万人を追跡調査。
歯の数が24本以下になった人は、25本以上残っている人より、脳梗塞になる危険性が1.5倍高かった。

 

ロイター 2008.05.28より

歯周病によりがんのリスクが高まる可能性があるとの研究結果が27日明らかになった。
インペリアル・カレッジ・ロンドンのドミニク・ミショー博士らが専門誌に発表した。
 
歯周病歴のある男性医療専門家を対象にした長期研究で、がんを患う可能性が全体的に14%高いことが判明した。
論文では「喫煙その他のリスク要因を考慮した上でも、歯周病は肺や腎臓、すい臓、血液のがんのリスク増大と大きな関連性があった」としている。
 
これまでの研究では、歯周病で心臓病や糖尿病の発生リスクが高まる可能性が示されていた。

 

朝日新聞 2006.10.16より

高齢者の死因の上位を占める肺炎。
その原因には、食道に入るべき消化物や唾液が誤って気道に入る「誤嚥(ごえん)」が関わっていることが多い。
誤嚥によって口の中の雑菌が肺に入り、肺炎を起こしているとみられ、誤嚥性肺炎と呼ばれる。
 
誤嚥は、睡眠中など無意識のうちに起きることも多いという。
肺炎予防のために口の中を清潔に保つ「口腔ケア」に力を入れたり、薬を使ったりする試みも行われている。
 
健康な人では食べ物を飲み込むと自然に食道へと入る。
誤って気道に入ってもせきをして吐き出そうとする。
いずれも脳からの指令による無意識の反射である。だが、脳卒中や認知症で嚥下やせきをつかさどる脳の部分に障害が起きると嚥下ができなくなってくる。
 
大阪の特別養護老人ホームでは2年前から口腔ケアに力を入れ始めた。
一人ずつ専用の歯ブラシをつくり、食後に介護者がブラッシングする。
口腔ケアの効果は、全国300人余の特養入所者を対象にした調査で立証されている。
食後の歯磨きとうがい薬によるうがいで口腔ケアをした入所者で、7日間以上の発熱で入院したのは2年間に15%で、口腔ケアを何もしなかった入所者の29%より少なかった
 
大阪大学歯学部顎口腔機能治療部教授によると、歯のない人にも歯茎を刺激したり、舌を指で押したりといったケアが必要で、口の中の刺激が脳を刺激し、嚥下を正しく保つ効果があるという。

 

朝日新聞 2005.01.19より

肥満者は歯周病に1.5倍かかりやすい--こんな結果を大阪府立看護大の研究グループがまとめた。
21日から大津市で開かれる日本疫学会学術総会で発表する。
 
歯周病の危険因子は、加齢、糖尿病、喫煙習慣などが知られる。
研究グループは、大阪府内の事業所に勤める「糖尿病ではない」20~59歳の男性1470人について調べた。
体重(キロ)を身長(メートル)で2回割ったBMI(体格指標)が18.5未満の人を低体重者、25以上を肥満者、その間を普通体重者とし、唾液中の血液濃度で 歯周病を判定した。
 
その結果、肥満者(388人)で16.75%、普通体重者(1033人)で11.52%がかかっていた。
年齢や喫煙習慣を考慮すると、肥満者は歯周病に普通体重者より1.49倍かかりやすくなり、統計的に明確な差があった。

 

朝日新聞 2004.06.28より

歯を磨くと血が出る。
奥歯がぐらつく。
東京都杉並区の主婦高橋彰子さん(68)=仮名=が、 歯周病治療に力を入れる西堀歯科(東京都渋谷区)を訪ねたのは、今から6年前。
症状に気付いてから1年たっていた。
 
「口の中の掃除と消毒をし、歯の磨き方を指導しました。その後も約3ヶ月に一回通ってもらっています」と、西堀雅一歯科医師。
定期検診では、歯と歯肉(歯ぐき)の間にできた溝「歯周ポケット」を歯科衛生士が調べ、ブラッシングを指導、歯石などを除去している。
高橋さんは「以前は2~3分だった歯磨きに、今は5分以上かける。かむにも不自由していたが、すっきりした」という。
 
歯周ポケットに食べかすが残り、侵入した細菌が炎症を起こすのが歯周病。
原因になる菌は10~15種類あるといわれる。
 
診察は、ポケットプローブと呼ばれる針のような器具を、歯周ポケットに軽く刺す。
深く刺さるほど進行した歯周病だ。
 
自覚症状はほとんどないが、口臭が強くなることが多い。
歯を磨くとき、歯肉から出血しやすくなる。悪化すると、何もしないのに出血したり、歯がぐらついたりしてくる。
すぐに歯科医に診てもらった方がいい。
 
ポケットが浅く、歯肉の炎症も軽度なら、歯磨きでかなりの効果が期待できる。
ただ、歯磨きだけで菌を完全に取り除くのは難しい。
そこで、歯科衛生士が歯科医師の指導の下、歯石やポケットにたまった菌を取り除く歯科医院が増えてきた。
 
衛生士の小木曽一恵さんは「継続して患者さんを診ることで、どこに問題があるか分かってくる」と話す。
定期的に患者と接すれば、歯肉の変化を敏感に感じ取れる。
再発しても、初期段階で食い止められる。
西堀さんは「再発予防は、患者の意識をいかに保つかが大切。患者に歯磨きの必要性を伝え、信頼関係を築くのに衛生士が果たす役割は大きい」と説明する。
 
広島高等歯科衛生士専門学校教務主任の小原啓子さんは「美容院に行く感覚で衛生士と付き合ってほしい」と訴える。
初期治療で大半は良くなるが「ごく一部、なかなか治らない人がいる」と西堀さん。
取り除きにくい菌に感染していると、抗生物質を使うことがある。
外科治療が必要なこともある。
合併症が疑われると、内科医受診を勧めるなどの助言もする。
 
ブラッシングの効能は、細菌を取り除くだけではない。
歯肉を刺激して血の流れを良くすると、免疫力で原因菌をやっつけられるようになるといわれる。
 
たばこと歯周病の関係を調べている吉江弘正・新潟大教授も、血流の重要性を指摘する。
喫煙習慣のある大学生16人に禁煙してもらうと、歯肉の血流は3日で増え始め、5日後には歯肉からしみ出て菌の感染を防ぐ液の量も増えた。
 
喫煙者の方が非喫煙者より歯周病になりやすく、禁煙した人は喫煙者より歯周病の再発が少ないといった別の研究結果と合わせ、「禁煙は、血流を回復させ免疫機能を高めることで、歯周病を防いでいる可能性が高い」と吉江さんはみている。
 
ただ、ある遺伝子の有無によって、喫煙者でも歯周病に特になりやすい人と、非喫煙者とほとんど変わらない人がいると分かってきた。
吉江さんは「歯周病予防は当面、丁寧な歯磨き、定期的な歯科検診、適切な生活習慣の『三つのて』の心がけから。将来は、それに遺伝子診断が加わるだろう」と指摘している。

 

朝日新聞 2004.06.21より

岡山県の主婦、川上敏子さん(52)=仮名=が、「血糖値が高め」と指摘されたのは20年以上前。
特に苦痛はなかったので、放っていた。
40代後半になって体のだるさに耐えられず、岡山大医学部付属病院を受診した。
 
「歯の具合はどうですか」。
内科医から聞かれて驚いた。
奥歯がぐらついて硬い肉が食べられなくなっていた。
紹介された同大学歯学部付属病院で診てもらうと、重度の歯周病だった。
 
口の中にはびこる細菌を抗生物質で減らし、手の施しようがないほど傷んだ奥歯を10本抜いた。
歯肉(歯ぐき)を切開し、残った歯の根元をきれいにする手術を受けた。
 
治療が終わると、血糖の傾向を示す検査値が改善し、健常な人に近づいた。
今は服薬で血糖をコントロールし、2~3ヶ月に一度、歯周病の検診に通う。
「歯の状態は良好で、気分もいい。 もっと早く治療を受ければよかった」と振り返る。
 
歯周病を治療することで、糖尿病の状態が改善する。
そんな海外の研究が97年に発表された時、同病院で歯周病を担当する西村英紀・助教授は「まさか」と思った。
でも、これまで同病院で十数人が川上さんと同様の経過をたどった。
重い歯周病が糖尿病を悪化させでいたと考えられている。
 
西村さんによると、歯周病を起こす細菌が血液中に入ることがきっかけになり、インスリンの働きを阻む物質が体内で増える
逆に、糖尿病があると歯周病にかかりやすいことは以前から知られていた。
「歯周病は全身の病気とも深くかかわっている」。
そんな考えが徐々に広まってきた。
 
九州大の斎藤俊行講師らは、95年から福岡市健康づくりセンターが実施する健康診断に参加して、希望する受診者を対象に歯の様子を診ている。
症例が増えるうち、肥満な人ほど歯周病になりやすいことが分かった。
 
脂肪がたくさんあると、その組織から血中にある種の信号物質が流れる。
それが歯肉での血液の流れを滞らせたり、歯を支える骨を壊れやすくしたりするらしい。
この仕組みは糖尿病とも共通している。
 
「初期の歯周病は痛みが伴わず、自覚しにくい。糖尿病も同じ。気づかないうちに進行し、お互いの病気の進行を促進させていることがある」。
斎藤さんらはそう考えている。
 
歯周病が心臓病を起こしやすくするともいわれる。
口の中の細菌がもとで、心臓に栄養を送る血管を詰まらせてしまうのだという。
最近は「歯周病が直接心臓病に結びつく確実な根拠はない」という説も出ていて、関係はまだよく分かっていない。
ただ、心臓の手術を受ける場合は事前に歯周病の有無を調べ、術中に口の中の細菌が感染しないようにすることが、ほぼ常識になっている。
 
歯周病があると、体の炎症を示すCRPというたんぱく質の値が高まることも分かってきた。
CRP値が高い状態が続くと動脈硬化を招き、心筋梗塞のリスクを高めると言われている。
 
糖尿病や肥満、高血圧といった生活習慣病は、複数の病気が同時に起こることで心臓病や脳卒中のリスクを加速させる。
歯周病もそうした生活習慣病の一つと考える専門家は多い。
 
「歯周病の治療は糖尿病や心臓病を治すのが目的ではない。でも、ほかの病気を改善できる可能性もある。全身の健康を保つという観点から、歯周病にもっと関心を寄せてほしい」と、大阪大歯学部の村上伸也教授は話す。

 

読売新聞 2003.12.16より

岐阜県の農業Aさん(76)は、9年前に治療したインプラント(人工歯根)がぐらついて、思うように食べものを噛み切れないのが悩みだった。
名古屋大学病院が、歯茎の骨(歯槽骨)の再生という新しい歯科医療に取り組んでいることを知り、昨年4月に治療を受けた。
今は、あぶったスルメイカも噛み切れるようになり、「何を食べてもおいしく感じられる」と喜んでいる。
 
歯が失われる原因で最も多いのは歯周病。
歯と歯茎の間にたまる歯垢(しこう)に含まれる細菌によって歯茎が赤く腫れ、進行すると歯を支える土台の歯槽骨まで破壊されてしまう
 
自覚症状はほとんどないが、大人の7割以上に軽い歯周病の症状があり、40歳以上では2割近くが重症といわれる。
Aさんの人工歯根がぐらついたのも、歯槽骨が徐々に崩れたのが原因だった。
 
歯槽骨が失われた場合、これまで骨を移植するなどしかなかったが、名古屋大教授の上田実さん(頭頸部・感覚器外科学)らは、患者本人の骨髄から採取した細胞を使い、歯槽骨など歯の周囲の組織を再生させる治療法を開発し、昨年10月には同大学病院に「再生歯科外来」を開設した。
これまでAさんら11人を治療した結果、全員が歯のぐらつきがなくなり、しっかり噛めるようになった。
 
培養した細胞などを利用して、様々な臓器や組織をよみがえらせる再生医療の中で、最も実用化が進む分野の一つだ。
治療では、まず患者の腰骨にごく細い針を刺し、骨髄液を2mlほど採取する。
全身麻酔や入院などは必要なく、15分ほどで済む。
骨髄には、骨や筋肉、血管などに分化する幹細胞が含まれており、4週間かけて培養し、約10万倍に増やす。
 
培養した幹細胞に、骨などへの分化を効率よく促すため、患者の血液から取り出した血小板を加えて、注射器で歯槽骨の患部に流し込む。
幹細胞は歯槽骨や歯根膜など歯を支える組織に成長していく。3か月ほどで患部はほぼ完全な状態になるという。
 
骨髄も血液も、患者自身のものを使うので、拒絶反応の心配もなく患者の負担も比較的少ないのが特徴だ。
この治療を受ける前に、歯垢を除去するなど処置を受け、歯周病自体の進行は止めておかなければならない。
 
先端医療センター歯科口腔外科(神戸市)でも近く治療を受けられるようになる。
現在は研究費から負担しているが、幹細胞の培養だけで約30万円かかる。
 
歯科の再生医療について上田さんは先週、「東京テクノ・フォーラム21」(代表=滝鼻卓雄読売新聞東京本社副社長・編集主幹) で将来展望などを講演。
その中で「歯周病の再生医療は、高齢者の生活を向上するのに役立つ。普及には産業化が必要だが、薬の代わりに細胞を使って治療する時代が来る」と話した。
 
上田さんらは、治療のカギとなる幹細胞を培養する技術をもとに、再生医療のベンチャー企業を設立。
2006年をめどに、全国の医療機関に幹細胞を提供できる体制作りを目指している。
 
また、歯そのものの再生にも取り組んでおり、「入れ歯は神経がつながらず噛み応えがないが、再生した歯なら脳に刺激を伝え、痴ほう予防にもなる」と期待している。

 

毎日新聞 2003.11.25より

残っている歯が少ない高齢者ほど、記憶をつかさどる大脳の海馬付近の容積が減少していることを、東北大大学院の渡辺誠・歯学研究科長らのグループが突き止めた。
アルツハイマー病になると海馬が萎縮することが知られており、渡辺さんは「ぼけ予防のためには、自分の歯の数を保つことが大切だ」と指摘する。
24日東京で開幕したアジア・オセアニア国際老年学会議で26日に発表する。
 
研究は、財団法人・ぼけ予防協会が厚生労働省の助成を受けて設置した調査研究検討委員会 (委員長、石川達也・東京歯科大学長)のプロジェクトとして実施された。
 
東北大グループは、仙台市内の70歳以上の高齢者1167人を対象に調査した。
健康な652人は平均14.9本の歯があったが、痴呆の疑いのある55人は同9.4本と少なかった。
 
さらに、高齢者195人(69~75歳)の脳をMRI(磁気共鳴画像化装置)で撮影し、残っている歯や噛みあわせの数と、脳組織の容積との関係を調べた。
その結果、歯が少ない人ほど海馬付近の容積が減少していた。
意志や思考など高次の脳機能に関連する前頭葉などの容積も減っていた。
また、噛みあわせ数が少ないと減少が大きかった。
 
渡辺さんは「噛むことで脳は刺激されるが、歯がなくなり、歯の周辺の痛みなどの神経が失われると脳が刺激されなくなる。それが脳の働きに影響を与えるのでは」と話す。

 

日本経済新聞 2003.07.27より

「年を取っても自分の歯で食事をしたかった」と悔やんでいる高齢者が大勢いる。
入れ歯の噛み合わせが合わないと、どんなにおいしいごちそうでも食事を楽しめない。
歯が抜けたためにうまく話せないと悩んでいる高齢者も多い。
一方、自分の歯が残っている高齢者は楽しく食生活を送ることができ、健康的だ。
自分の歯を保ち続けることの重要性を思い知らされる。
 
1999年度に実施した厚生労働省の調査によると、80歳での平均残存歯数は8.2本。
80歳で自分の歯が20本以上残っている人は15%だ。
 
高齢者の場合、病気や全身状態、服用している薬剤などの種類によって口の中の状態が変化する。
このため、自分の歯を1本でも多く残すには、歯科医をはじめ、内科医、精神科医、臨床看護師らの協力が必要だ。
 
東京都老人総合研究所の研究員は、20年にわたって高齢者の口の中の状態を調査してきた。
それによると、口の中が健康に保たれている高齢者は、病気になりにくく、社会的活動も高いとの結果が出ている。
特に痴呆症の介護では適切な口腔ケアが肺炎を予防し高齢者の栄養状態を保つ観点からも重要になっている。
研究員によれば、自分の歯をいつまでも健康に維持するためには口の中を傷つけないやわらかいブラシが高齢者には役立つという。
 
北欧のフィンランドは歯に対する関心が高い国だ。
1970年より国民の歯をすべて残すことを目指している。
同国では若い世代への対策を重視しているという。
将来、年を取ってから起きる歯の問題を少しでも軽くするために今から国家レベルで予防に取り組もうというもので、注目される。
 
日ごろから歯を大切にする努力は欠かせないが、残念ながら歯を失ってしまった場合、再生させることはできないだろうか。
東京大学医科学研究所の博士は歯胚(はい)細胞と呼ばれる歯の基になる細胞に注目。
ブタの下あごの骨から取り出した歯胚からエナメル質と象牙質を備えた歯を再生させる実験に成功した。
しかし、歯の構造は複雑だ。いろいろな食べ物をきちんと噛めるようなしっかりとした歯を再生するには、克服しなければならない科学的課題が多い。
 
将来、再生医療の進歩によって、いったん失った歯をもう一度再生できるようになるかもしれない。
だが、その時までは自分の歯を1本でも多く残して高齢期を迎えることが食生活を楽しみ高齢期の健康を保つ重要な方法であることは間違いないだろう。

 

読売新聞 2003.01.21より

歯周病が心筋梗塞や脳梗塞の危険性と関係があるというデータを米ハーバード大の研究者らがまとめ、米心臓協会の専門誌「ストローク」(電子版)で発表した。
 
歯が抜ける原因はさまざまだが、歯周病もその一つ。
歯周病菌は動脈硬化の悪化に関与しているとの報告も最近増えており、心筋梗塞や脳梗塞の危険を高めている可能性がある。
そこで研究チームは、冠動脈疾患や糖尿病にかかっていない40-75歳の健康な男性約4万人を12年間にわたり調査し、歯の本数(通常は32本)と病気の関係を分析した。
この間、349人が脳梗塞になったが、歯が25本未満の人たちは、25本以上残っている人たちより脳梗塞になる危険が約1.6倍高かった
この数値は喫煙や肥満,飲酒など、脳梗塞を起こすほかの 危険因子に個人差があるのを考慮したうえで算出されている。

 

朝日新聞 2001.10.01より

美しく白い歯は、健康でさわやかな印象を与えます。
ただ、加齢や食習慣などによって、歯の変色や着色が次第に進みます。
薬の副作用で歯内部から変色することもあります。
最近、薬剤で漂白したりする「歯の美白法」に関心が高まっています。
 

抗生剤の副作用

歯の変色や着色は、さまざまな原因で起こる。体質から黄ばみの目立つ人もいるし、だれでも年齢を重ねると黄褐色に染まってくる。たばこ、お茶、コーヒー、赤ワインでも着色しやすい。原因は違っても、歯の色に悩む人は少なくない。
 
「歯の色を気にして、学校や職場、友人の前で心から笑えないという人たちがいる。なかには医療の助けが必要な人もいる」 というのは、新潟大歯学部教授の岩久正明さんだ。
同大付属病院は95年に全国に先駆けて、変色歯の専門外来を開いた。
これまでに500人近くが相談に訪れた。
6割が幼少時に服用したテトラサイクリンという抗生剤の副作用による変色だった。
永久歯全体がしま模様状に濃い灰色や茶褐色に染まり、強い劣等感を抱いたり、いじめにあったりするなど深刻な訴えをする人もいた。
この薬剤は60、70年代に風邪などの治療で多用され、現在20代~30代を中心に数百万人規模で変色歯の副作用が出ていると 考えられている。
 
強い変色には、合成樹脂を吹き付けて白くする方法や、歯の表面を1本ごとにごく薄く削り、ポーセレンという陶材をはり付ける ラミネート・ベニヤという方法が一般的だ。
しかし、ベニヤでは、歯ぐきが後退すると地の歯の色が見えてきたり、一部が欠けたりすることもあり、手入れをしないと10年以上効果を保つのは難しい。
健康な歯を削り、虫歯ができやすくなるなどの心配もある。
 
一方、虫歯の治療で神経を抜いたり、外傷を受けたりすると、歯が部分的に変色することがある。
この場合、歯の内側から漂白剤を入れて歯の色を戻す。
 
ここ数年、薬剤を使って歯を漂白してくれる歯科医院も増えてきた。 90年代から米国で広まった方法だ。
 
『スーパーホワイトニング 歯の美白』などの著書がある近藤歯科(東京都目黒区)院長の近藤隆一さんは「漂白法は歯を削らずに白くできる優れた治療法だ。 比較的簡単に反復して受けられるのも魅力。 歯が白くなり、自信が持てるようになったという人が増えている」と話す。
 

治療数回で効果

薬剤による漂白法では、歯1本ごとに過酸化水素などの薬剤を塗り、強い光をあてて白くする。
加齢による変色などは、数回の治療で効果が出てくる。
歯科医師の指導を受けて、自宅で就寝中に漂白する方法もある。
超薄型のマウスピースのような用具をつくり、ゼリー状の過酸化水素や過酸化尿素を注入、装着して眠る。
使用中に一時的な知覚過敏やのどのひりひりを訴える人がいるが、2週間から1ヶ月ほどで、個人差はあるが驚くほど歯が白くなるという。
抗生剤の副作用による変色でも、軽度から中程度なら効果的だ。
 
漂白法を研究している昭和大歯学部教授の久光久さんは「10年の実績がある米国でも目立った副作用の報告はなく、安全性や効果にも問題はない。ただ漂白剤による歯への長期的な影響は完全には解明されていない。10代ではまだ歯が成熟していないので、成人してからが望ましい」と助言する。
 
ただ、漂白法も時間がたつと色が後戻りしてしまう。再漂白や定期的なメンテナンスが必要だ。
大半の漂白剤は国内の承認は受けておらず、歯科医師の責任と判断で輸入、使用されているのが現状だ。
 

白過ぎは不自然

気になるのが、治療費の問題だ。
審美目的では医療保険が適用されない。
ラミネート・ベニヤでは歯1本につき、大学病院で約6万円、開業医だと10万円前後。
前歯だけでも上下で数十万円は必要だ。
漂白も、自宅方式の上下で約十万円が相場だ。
 
一方で、歯の色を気にし過ぎてもいけないと歯科医師たちはアドバイスしている。
歯は本来真っ白ではなくクリーム色に近く、個人差もある。それでも、より白く、より白くと望み、悩む人もいるという。
「チョークのように真っ白い歯」 は、かえって不自然なことも忘れてはいけないようだ。
 

時にはプロのお掃除を

歯の変色や着色を防ぐには、日ごろの手入れも大切だ。
歯科医師や歯科衛生士に、歯ブラシの選び方から磨き方まで指導を受けるのもいい。
「間違いだらけの自己流歯磨き」が少なくないからだ。
 
新潟大歯学部講師の福島正義さんは、歯を湯のみに例えてこう説明している。湯のみは使うごとに水洗いする。
これが毎日の歯磨きと同じだ。
それでも湯のみには茶渋が少しずつこびりついてくる。
そこで、たまにクレンザーと金属たわしを使い、ゴシゴシと洗えばきれいになる。
それでも落ちない長年の汚れは漂白剤につけて落とすしかない。
歯にもたまには「金属たわし」が必要だ。
これが歯科医院で受けられる専門的な清掃法だ。
特殊な器具や研磨剤などを使い口の中をきれいにする。
歯石、歯垢も除去され、抗生剤の副作用など歯の中からの変色がなければ、歯はかなり白くなる。
 
それでも、落ちない長年の黄ばみが気になるなら、薬剤による漂白法を試してみたらどうだろう。

 

読売新聞 2000.01.14より

鹿児島市内歯科医師によると最近の若い人について特に気になるのが飲料水のがぶ飲み、そしてたばこの影響だ。
前歯にかぶせたものが外れやすく、見栄が悪いと来院した会社員(28)。
口の中をよく検査すると、ほとんどの歯が虫歯に侵されている。
歯茎も腫れ、出血も見られる。
一日にたばこを約20本、10年近く吸っているといい、歯茎全体が黒ずみ始めている。
このままでは若いうちに歯周病で歯を失いそうだ。
「歯茎が真っ黒ですよ」という指摘に、虫歯には無頓着だったこの男性はショックを受けた様子。
禁煙の勧めにうなずいた。
歯科医師は「若い人や女性には、美容的な面を強調し、禁煙を勧めるのも効果的。 結果として歯周病予防につながれば」と話す。
通常30分ぐらいかける歯周病の検査結果の説明でも、必ずたばこの悪影響に触れる。
5年前からは、本人の希望によって、ニコチンガムなどを使った禁煙指導もしている。
 
大阪大学歯学部助教授の話ではたばこに含まれるニコチンには、歯茎の組織を傷つけるうえ、修復を妨げる作用がある。
免疫機能を低下させるために、歯周病を起こす細菌が増えやすい。
助教授は「喫煙者の歯周病は、若い年齢で発症し進行が早い。いったん治療しても再び悪くなりやすいのが特徴。出血の自覚症状が出にくく、発見が遅れる原因にもなる」と、歯周病の要因に喫煙習慣が強い関わりを持つと指摘する。
 
歯を失わないために、歯周病対策と並んで大切な虫歯予防では、フッ化物の利用が重要な役割を果たす。
日本歯科医学会では昨年末、フッ化物の利用を勧める見解をまとめた。
虫歯は、歯のエナメル質が溶け出す「脱灰(だっかい)」現象と、唾液などの働きで元に戻る「再石灰化」のバランスが崩れ、一方的に脱灰が進んだために起きる。
フッ素は再石灰化を促し、脱灰を妨げる。
 
昭和大学歯学部教授によれば若いうちから虫歯や歯周病を防いで、口の中を健康に保つことは、年をとってからの生活の質を大きく左右する。
年をとり歯があちこち抜け落ちた口では、見るからにうまく噛めないだけでなく、下あごをギュッと噛みしめられないため飲みこみができない「嚥下(えんげ)障害」の問題も大きいという。
食事が進まず十分な栄養が摂れないと、管からの栄養に頼らざるをえない。
自由な動きを妨げ、やがては全身状態の低下につながる。
食べられないからと口の中を不潔に放っておくと、肺炎などの原因にもなる。
 
高齢化社会にあって、自分の歯を長く保つことの重要さをかみしめたい。

 

読売新聞 1999.06.11より

放置すると歯周炎に進行

歯茎が腫れたり、出血したりする歯肉炎にかかる人が10-30歳代で増えている。
生活習慣の乱れが背景にあるが、虫歯のように痛みが伴わないためそのまま放っておく人が少なくない。
中高年になって歯周炎に移行、歯を失う恐れもあり、正しい歯磨きも含め予防を心掛けることが大切だ。
 

歯肉炎とは

歯肉炎は、口の中の細菌が固まってできるプラーク(歯垢)の毒素によって、歯肉(歯茎)が炎症を起こし、腫れたり出血したりする病気。
そのまま炎症が広がると、歯周炎に進行することが多く、歯を失う原因にもなる。
厚生省の歯科疾患実態調査(1993年)によると、歯肉炎にかかっている人の割合は、10、20、30歳代でいずれも同年代人口の60%近くを占める。
しかも前回調査時(87年)よりそれぞれ約9、2、6ポイント高くなった。
 

生活習慣の乱れが原因

サンスターが今年2月、首都圏と大阪圏に住む20-30歳代の男女300人に尋ねたアンケート調査でも、約70%の人が歯や口に何らかのトラブルがあると回答。
このうち「歯を磨くと出血することがある」が最も多く約30%だった。
歯肉炎にかかる若年層が増えていることについて、日本大学歯学部助教授(口腔衛生学)は、朝食代わりに甘い缶コーヒーを飲んで、そのまま歯を磨かないとか、間食が多いなど、「生活習慣の乱れ」を指摘する。
サンスターの調査でも「朝食は毎日摂る」「運動は定期的に行う」など、よい生活習慣の人ほど口の中のトラブルが少ないことが分かった。
 
問題なのは歯周炎は病気だという認識が欠けていること。「この世代は、虫歯だけが歯の病気と考えがちで、出血しても放っておく人が少なくない」と助教授は注意を呼びかける。
一番の予防は普段から歯肉を観察すること。
健康な歯肉は薄いピンク色で、触ってみると引き締まっているが、歯周炎になると赤くブヨブヨとして、歯磨き程度の軽い刺激で出血する。
症状が軽ければきちんと歯を磨くことで治るが、重い場合は歯科医を受診する必要があるという。
 

正しいブラッシング

歯磨きの方法について、ライオン歯科衛生研究所(東京)の歯科衛生士は「歯の表面だけでなく歯と歯肉の間もきちんと磨いてほしい」とアドバイスする。
歯ブラシをペンと同じように持って、歯ブラシの毛先を歯と歯肉の境目に45度の角度で当て、力を入れすぎないように注意しながら、小刻みにブラシを動かすことがコツだ。

読売新聞 1998.11.28より

自前の歯は健康に直結

歯は食生活の楽しみや体の健康につながる一方、最近特に歯抜けと痴呆との関連性が注目されている。
 

50代以降、抜け方加速
歯は、普通28本(ただし親知らずは除く)ある。厚生省の歯科疾患実態調査 (1993年)によると、自前の歯の本数は、20代前半をピークに徐々に減り始め、50代以降は抜け方が加速され、70代前半で半数以上の18本を失ってしまう。
 
歯と痴呆

人は上下の歯の間にはさまった髪の毛一本を異物と感じることができる。
これは歯とあごの骨の間にある歯根膜という鋭敏な感覚センサーのはたらきによる。
これらの感覚センサーは、モグラやネズミでいえばヒゲに相当する感覚器であり、歯が抜けるとこれらの鋭敏な神経からの信号が脳に入らなくなってボケてくるともいわれている。
アルツハイマー型の痴呆患者36人、脳血管性の痴呆患者39人と健康な高齢者78人の 残存歯数を調べた結果、アルツハイマー型痴呆が平均3本、脳血管性痴呆が6本、 健康老人が9本と、痴呆患者の残存歯数は健康老人に比べて明らかに少なかった。
さらに合計153人全員の頭部をCT画像で比べると、残存歯数が少ないほど脳内 (側脳室内)のすき間が広く、脳の萎縮が進んでいた
またアルツハイマー型の痴呆患者は、 健康老人より平均約15%ほど脳が縮んでいることもわかった。
研究者達は、 歯の喪失がアルツハイマーの原因のひとつになっていると見ている。